衆院本会議で2日、「刑法の一部を改正する法律案」(性犯罪厳罰化法案)の趣旨説明と質疑が行われ、民進党を代表して井出庸生議員が質問に立った。
本法案の主な内容は、(1)「強姦罪」を廃止、「強制性交等罪」を新設(2)法定刑の下限を懲役3年から5年に引き上げ(3)告訴がなくても起訴できるように改める親告罪規定の削除(4)被害者を女性に限らず、一部の性交類似行為と一本化(5)「監護者わいせつ罪」として処罰する規定も新設――等というもの。
明治時代の制定以来の大幅改正になる本法案の重要性について井出議員は、「苦しみの中から声を上げられた方、さらには、声を上げることができなかった多くの方々、苦しみの中を歩み続けるご家族、被害者に寄り添い支援に当たってこられた関係者の方々の、努力の結実である」と指摘。その一方、議会の慣例を破り、これほど重要な法案より共謀罪法案の審議を先行させ、強行採決した政府与党の議会運営に対して強く抗議した。
強姦について井出議員は、それが「魂の殺人」だと言われるゆえんについて、フランスの学者、ジョルジュ・ヴィガレロの書いた「強姦の歴史」という本をひもといて説明した。「1978年の強姦裁判、エクスの裁判に関連する言葉として、被害者が『強姦、それは破壊でした。私たちそのものを破壊することでした』と、被害者の弁護人が、『強姦の日から、彼女たちは、内面に入り込んで離れない死を抱えて生きなければならない』などの証言を紹介した。
強姦罪の保護法益が判例・通説で「性的自由の侵害」とされているのに対して、強姦罪改め強制性交等罪の保護法益について、「性的自由のみにとどまるのか。それとも、被害者の人格や尊厳、心身を守ることも保護法益とするのか」をただした。それに対して金田法相は「強姦罪の保護法益は一般に性的自由、性的自己決定権と解されている。強制性交等罪の保護法益も同様と考える」「人格や尊厳を性犯罪の保護法益にするのは抽象的に過ぎる」と答弁した。
本改正案の強制性交等罪の要件に「暴行又は脅迫」が課されていることに関連して「恐怖で身がすくむ、殺されるかもしれないと思って抵抗できない。これは被害者に起こる普通の反応だ」と指摘し、こうした反応と、強制性交等罪の構成要件に暴行・脅迫要件を課すことの合理性について政府側の見解を求めた。金田法相は「客観的要件を定めていることには合理性がある」と見直す考えのないことを明らかにした。
強姦罪の公訴時効期間が10年、強制わいせつ罪が7年という現行法の規定に関連して「児童ポルノ被害の深刻化などに鑑みれば、被害者が成人もしくは自立してからでも被害申告ができるよう、未成年者を対象に、時効を一定年数停止することも重要な検討事項ではないか」と提案し、政府側の認識をただした。金田法相は「慎重な検討を要する」と述べ、否定的な見解を示した。